SAD(社会不安障害)と生きる

社会(社交)不安障害の当事者です。症状のことや対処法について、のんびりと書いてます。

対人援助職について

私は、現在、対人援助職と呼ばれる部類の仕事をしています。まあ、人の役に立たない仕事ってないので、対人援助職ってわざわざ言うのも大げさな感じですが、ほかに適当な呼び方が思いつかないもので、、、


対人援助職の定まった定義があるわけではないようですが、医療 ・教育 ・福祉などの領域における職務の総称として、対人援助職という呼び方が使われることが多いようです。看護師、ソーシャルワーカー、教員、カウンセラーetc


私は、前職が事務のお仕事だったんですが、激しく性に合わなかったのと、人に関わる仕事がしたいという思いから現在の仕事を選びました。学生の頃に、インタビュー調査をやったことがあるのですが、(対人恐怖のくせに)インタビューが面白かったという経験も影響しています。


しかし、対人援助職に就く前は、やってみたい!という気持ちの方が強かったですが、その一方で、私のこれまでの経験が悪い影響を及ぼさなければいいけど、、、という不安もありました。


対人援助職で関わる当事者の人って何らかの困難を抱えているわけです。そして、私も山ほどの困難をこれまで抱えてきました。家族関係の問題もありました。私が抱えてきたもろもろの困難にまつわる経験(特に家族との軋轢)、つまり私自身が抱えている問題と当事者が抱えている問題を混同してしまわないかが不安でした。


カウンセラーなどの対人援助職に就こうとする人のなかには、一定の割合で、その人自身が苦しい思いをしてきており、その経験をもとに人助けがしたい!という人がいます。でも、自分が苦しんできたから相手の苦しみに寄り添って良い援助ができるかって言うと、なかなかそう単純には行かないのではないかと思います。たまに、自分がこんな風に病気や問題を乗り越えてきたっていうのを前面に出して、カウンセリングなり何らかの相談業務を行っている方がいますが、私が援助を受ける側だったらこういう人は選びたくないなって思ってしまいます。


心療内科に通っている頃に、医者が自分語りをすることがたまにありました。例えば、「僕も、もともと会社員やってて、途中で医学部目指して医者になったけど、周りに遅れを取ってるって思ったことない。いくらでも取り返しがきくから、大丈夫。」って言われたことがあります。励ますつもりで言ってくれているんでしょうが、「あなたの状況と私の状況は違うし、いきなりそんなざっくりと励まされてもなぁ・・・。自分が頑張ってきたっていうのを言いたいだけじゃないん?」とひねくれ者の私は思っておりました。


援助の場面での自己開示の問題って難しいですよね。医師やカウンセラーさんがどう感じているかをクライエントに伝えることは、必要な場面はあると思います。でも、医師やカウンセラーが自分の経験をクライエントに伝えるっていうのは、どうしても違和感あるんですよね・・・(特に、「私も大変だったけど乗り越えたから、あなたも頑張って」系のやつ)。


依存症や児童虐待の問題に取り組んでいる臨床心理士信田さよ子さんという方がいて、著書もたくさん出されているのですが、その方の著作に次のような記述がありました。


信田さんは、「率直な意見を述べれば、できればその人たち(依存症からの回復者など、自分が苦しんだ経験を活かしてカウンセラーになりたいと考えている人たち-引用者註)はカウンセリングの世界ではないところで職業を選択されたほうがいいのではないかと思っています。」と述べています。その理由は、柔軟な想像力がカウンセラーには必要とされるが、「自分の経験のあまりの確かさが、かえってそのひとを経験から自由にさせてくれないという弊害があるのではないか」と思うからだそうです*1


これを最初に読んだときは、正直、ガーン(=´;ω;`=)と思いましたよ。私には、対人援助職は向かないのかもしれないと落ち込みました。


しかし!落ち込んでばかりもいられません!!
私は、この仕事をきちんとやり遂げたいんです!そして、きれい事だけじゃなくお金稼がなきゃいけないんで、今更仕事辞めるつもりもありませんしねっ!!


自分の経験に振り回されずに、目の前のケースに向き合えるようにするために、自分が少しでも元気で楽しく生活すること、自分の重荷を少しでも軽くすることが、私にとっては必要だし重要なテーマなのです。


しかし、不思議ですね。自助会では、お互いの経験を語り合うことこそが自分の力になったのに、カウンセリングや援助を受ける場面になると経験の意味合い(援助者がその場に自分の経験を持ち出すことが、必ずしもクライエントの助けにならない)がこんなにも変わるってのは、何でなんでしょうか。

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*1:信田さよ子『カウンセリングで何ができるか』大月書店, 2007, p.34